一人親方等に対する支給は給与か外注費か?

2013-08-08

8月6日から本日まで税理士試験が行われました。

受験生の皆様1年間お疲れ様でした。

8月はゆっくり休んでいただき9月から新たなステージで実務、勉強等頑張ってください。

税理士受験生はこの時期が就職活動のピークです。

この灼熱の中、ジャケット・ネクタイ着用、汗だらだらで面接を受けた事も懐かしい思い出です。

 

 

 

 

給与か外注費か?

 

 

今も昔もよくお客様から相談を受け、また税務調査でも度々焦点となります。

期中、一人親方等に対して「外注費」処理をしていて税務調査で「給与」修正の指示を受けた場合

 

 

「消費税の仕入れ税額控除の否認(課税仕入れ→不課税仕入れ)」

 

「源泉所得税の徴収漏れ」



のWパンチとなります。

(さらに延滞税等も課せられます。)

 

 

では、「外注費(事業所得)」「給与(給与所得)」の線引きというと基本的には

 

 

「請負契約に基づいて受ける役務提供の対価は外注費(事業所得)」

 

「雇用契約に基づいて受ける役務提供の対価は給与(給与所得)」

 
となります。

 

 

請負(民法632条)

当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

 

雇用(民法623条)

当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

 

 

では、形式的に請負契約書を作成すれば事業所得になるのか? というとそうではありません。

 

 

税務上は形式+実質で判断します。

 

 

実務上、外注費(事業所得)として認められるのは以下を満たす場合と言われます。

 

 

・自己責任であること 

 

・営利性があること 

 

・反復継続性があること

 

 

 

 

具体的には

 

・  他人が代替して業務の遂行、役務の提供が可能か。(可能であれば請負:外注)

 

・  作業時間が指定されている、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束を受けるか。(受ける場合は雇用:給与)

 

・   作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるか。(受ける場合は雇用:給与)

 

・   まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務の報酬の支払を請求できるか。(請求できる場合は雇用:給与)

 

・ 材料又は用具等を報酬の支払者から供与されているか。(供与される場合は雇用:給与)

 

 

等を勘案して判断する事になります。

 

 

また、形式的にも「請負契約書」の作成や「受注者の計算の基発行した請求書に対して支払う」等の要件を満たす事も重要となります。

 

 

気になる方は一度ご相談下さいませ。

 

 

 

(根拠条文等:興味のある方のみご一読下さい。)

 

 

所得税法上、事業所得・給与所得の基準に係る明文規定等はありません。

 

事業所得(所得税法第27条第1項)
 
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
 

給与所得(所得税法第28条第1項)

俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。
 

 

 

ただし最高裁の昭和56年4月24日判決で以下のように述べられています。

 

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいいます。

 

給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。

なお、給与所得については、とりわけ、給与所得者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

 

 

 

また、消費税法の基本通達では以下のように述べられています。

 

 

個人事業者と給与所得者の区分(消費税法基本通達1-1-1)

 

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。

 

したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるか区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。

 

この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

 

 

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。

 

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。


(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。

 

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。


 

 

参考 給与所得と事業所得の区分/外注費の課税仕入れ該当性
東京地裁平成19年11月16日判決
東京高裁平成20年4月23日判決

 

 

 

大阪、京都、神戸、奈良/枚方(樟葉)、交野、寝屋川、高槻、八幡
30代税理士 竹下 和彦

 

 

 

 

 

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